鹿児島市星ケ峯「陽(はる)歯科クリニック」は、予防で新たなむし歯をつくらない歯科医院です
2022-07-21

人生100年時代の歯科医療について

去る6月4日、陽歯科クリニック院内において患者さん向けにお口の健康講座を実施いたしました。遅ればせながらここに講演内容の一部を載せ、紹介させていただきます。

人生100年時代の歯科医療との関わり方

本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。当院は開業して15年目ですが、日々皆さんのお口の中を見る中で色々な気づきがあります。お口の中は生まれたときから色々な機能を獲得し、年を取るにつれて徐々に衰えていきます。そんなお口の変化をちゃんと理解して早い段階で対応ができれば、困る人も減るんじゃないかと考えました。これを機会に、多くの方にお口の中のことを知ってもらうために今回お話をさせていただきます。

 

年齢とともに増えるお口のトラブル

北欧やアメリカの人は定期的に歯医者さんに行く割合が高く、歯もたくさん残っているという調査結果をご存じでしょうか。これは平成最初の頃のデータですが、日本人は80歳のときに残っている歯は平均8本です。定期的に歯医者を受診している人は年を取ってもある程度歯が残っていますが、歯磨き指導だけの人はだんだん落ちていきます。そして、症状がある時だけ受診する人は、80代でほとんど歯が残っていません。

平成28年のデータでは、80代で歯が20本残っている人は50%を超えたそうです。高齢になってもたくさん歯が残るようになってはいますが、お口の機能はやはり低下しています。硬いものが食べにくくなった、口の渇きが気になるという方が年を取るにつれて増えています。機能的な面で衰えが現れてくるんですね。

虫歯がある人の割合を見ても、年々若い方が減って年配の方の割合が増えています。歯が残るようになった一方で、その残った歯が虫歯になっているんです。年齢とともに歯茎が下がっていったり、歯周病で物が詰まりやすくなったり、歯が長くなったりというトラブルが起きますが、歯の根本が虫歯になってしまいます。

 

人間の寿命が世界的に延びている

4~5年前に出た「LIFE SHIFT」という本では、人の平均寿命は10年ごとに2~3年ずつ伸びていると書かれています。今から約100年前の1914年生まれの人で、100歳まで生きた人は2%以下でした。でも2007年に生まれたアメリカやイタリア、フランスの子どもたちの50%は、少なくとも104歳まで生きる可能性があるそうです。日本の子どもに至っては、107歳まで生きる可能性が50%あります。確かに、最近は高齢の方も非常に若々しいですよね。でもただ長生きすればいいというわけではありません。やっぱり皆さん健康で長生きしたいはずなんです。

では、現状はどうでしょうか。当院に92歳の患者さんで、入れ歯を作って欲しいということでご依頼がありました。お口の中を見てみると、上が10本、下が8本の歯があります。しかし嚙み合わせが悪く、自分の歯では噛めない・食べられないんです。今は入れ歯を使って食べられるようになりましたが、通院が難しく訪問診療のため、細かい虫歯の治療などは難しいのが実情です。これは健康な状態と言えるでしょうか。

 

オーラルフレイルを予防しよう

皆さん、「オーラルフレイル」という言葉を聞いたことがありますか?「フレイル」というのは、年齢を重ねることで生じる衰え全般を意味しています。体の全身的なもの、筋力が落ちて疲れやすくなるようなことですね。フレイルは、健康かそうでないかの狭間の状態、健常と要介護を行ったり来たりしている状態です。お口の中でも同じようなことが起こっていて、お口の機能が徐々に衰えていくことをオーラルフレイルと言います。

例えば、食事中にむせる・以前より硬いものが食べにくい・飲み込みにくくなったと感じる場面が多くなってきたら、フレイルかもしれません。フレイルにも段階があって、最初はレベル1のお口の些細なトラブルから始まります。そこから、滑舌の低下・食べこぼし・むせるというレベル2に進んでいき、だんだんと口の中が不潔になっていったり、舌が動きにくくなったり、口を閉じる力が弱っていったりします。咀嚼障害・嚥下障害が起きるとレベル3で、一人では食べられない状態になってしまいます。

レベル2までは歯科医院の診療室内で診ることができます。お口のリハビリなど対策を取れば、まだ予防できるかもしれません。このレベル2に相当する状態を「口腔機能低下症」といいます。口腔機能低下症の判断基準は、次の7つです。

1.口腔衛生状態不良

2.口腔乾燥

3.咬合力低下

4.舌口唇運動機能低下

5.低舌圧

6.咀嚼機能低下

7.嚥下機能低下

7項目中、3項目以上が当てはまると口腔機能低下症と判断されます。

この中で口腔衛生状態不良についてお話すると、舌を9つの部位に分けてスコアを付ける方法で診断します。それぞれの部位に舌苔(ぜったい)というコケがどのぐらいついているかを見ますが、スコアは0~2点まであって9か所で18点が満点です。スコアが9以上で衛生不良と判断します。舌を出した時に白っぽいなと思うことがあると思いますが、コケは拭ったら取れるので、白っぽさとは全く違う状態です。お口の機能が落ちてくると、本来は食べ物を飲み込むときに持ち上がるはずの舌が衰えて下がってしまい、むせることやコケが生えることにつながります。最近みた症例では、口腔カンジダ症というカビが生えたケースもありました。その患者さんは入れ歯ですが、よく噛めないから結局やわらかい食べ物ばかりになって、栄養が偏り口の中にも菌やカビがついてしまったようです。

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