鹿児島市星ケ峯「陽(はる)歯科クリニック」は、予防で新たなむし歯をつくらない歯科医院です
2022-07-23

人生100年時代の歯科医療についてpart2

歯周病は万病のもと

当院でも皆さんの歯周ポケットを見させていただいていますが、歯周病は全身疾患との関連があると言われています。歯周ポケット内で出血する部分には、潰瘍があるんですね。要するに、歯茎の内皮が腫れている状態です。そこから歯周病菌が毛細血管に侵入して、全身に入ります。その結果、色々な全身疾患を発症・悪化させます。内臓を基盤として発症するメタボリックシンドローム、高脂血症、高血圧、糖尿病を悪化させて生活習慣病になっていきます。

特に糖尿病患者は、歯周病治療を受けることで血糖値やヘモグロビン値が改善する相関関係が明らかになっています。歯周病治療を受けたことで、血糖値が改善する方もいらっしゃいます。妊娠中の女性にとっては、早産や低体重児のリスクがあります。歯周病治療によってリスクの予防効果があるとまではまだ言えない段階ですが、お母さんが歯周病にかかっていることで、早産や低体重児出産のリスクは少なからずあるということです。

また、歯周病と認知症との関係も近年の研究で明らかになってきました。認知症には、アルツハイマー型認知症・血管性認知症・レビー小体型認知症・前頭側頭型認知症の4つがありますが、圧倒的に多いのはアルツハイマー型認知症です。その原因は、脳に異常たんぱく質であるアミロイドβという物質が溜まって、神経細胞障害が起きるせいだと言われています。アルツハイマー病の発症率は70歳後半から増加しますが、原因物質であるアミロイドβの蓄積は40歳代後半からすでに始まっています。

アミロイドβの蓄積と歯周病菌による体内の炎症が加わると、さらにアルツハイマー病を増悪させる可能性があるため、40代からは特に歯周病ケアをすることが大事です。歯周病患者は、健康な人に比べてアルツハイマー病を発症する確率が1.7倍高いそうです。また、認知機能の低下が早まるとも言われていますので、歯周病は万病のもとになり得るんですね。

 

歯科治療で全身疾患を防ぐことが大事

今の70代の方が子どもの頃、1960年代は虫歯の洪水と言われていました。歯医者さんは朝から行列で、1日100人くらいが押し寄せる状態。とてもじゃないけれど丁寧に時間を取って診察することはできません。痛みを止めるだけで精一杯で、結果として60代で総入れ歯です。さらに、現代の子どもたちのように歯並びのことや食べ物の習慣について話す先生は皆無でした。だから大人になる頃にはみんな歯周病や虫歯だらけだったんです。

私は歯科医になって23年ほどですが、私がまだ研修医の頃は60代の患者さんはほとんど入れ歯でした。今はそういう人は減っていますが、結局子どもの頃に対処的な治療を受けているのが原因なんですね。川の上流と下流をイメージしていただければわかりやすいと思いますが、歯を削って詰める・かぶせる・抜歯や入れ歯などはいわゆる対症療法で、下流でそれらをいくら頑張っても解決しません。きちんと上流にある原因やお口の機能改善にアプローチしていかないと、明るい未来は築けないと思います。当院も予防のことをいつも皆さんにお伝えしていますが、「治療するだけでおしまい」はもったいないですね。

「メタボリックドミノ」という言葉をご存じでしょうか?メタボリックシンドロームに至るまでの過程を示したものですが、この下流には色々な病気があります。心不全、失明、透析など重篤なものです。でも実は、この上流に虫歯や歯周病といった歯医者で扱う疾患があります。下流まで下りてくる前にお口の中で食い止められれば、ドミノ倒し的に起きる様々な全身疾患を防ぐことにつながるんです。

 

正しいケアと食習慣が健康への近道

高齢の方は特に、先ほどの口腔機能低下症に注意が必要です。ゆるやかに落ちていくのはまだいいのですが、急激に落ちると良くないですね。これを防ぐには、歯医者で治療とメンテナンスを定期的に受けることをおすすめします。それから、自分に合ったお口のケア習慣を身につけて欲しいですね。食べ物にも気をつけていただきたくて、いつまでも硬いものばかり食べるのは危険な場合もあります。

当院の患者さんには、ピーナッツを噛んで歯が割れた方がいます。若い方は歯の神経が敏感なので、圧力や温度に対する感度が良く、危険を察知すれば噛むことを自分で制御できます。でも年を取って、治療で被せ物をしたり神経を抜いたりしている方は、歯の感度が落ちて少々の痛みや温度がわからないんです。一方で、口の筋肉はそれほど衰えませんから、歯ごたえがあるものが好きな方は好んで食べてしまう。いつまでもそれを続けていると、ある日突然歯が割れたり、腫れて抜歯したりという結果になります。ですから、年齢を重ねるほど硬いものには気をつけてほしいですね。

先日のニュースで、政府が「国民皆歯科検診」を検討していると出ていました。今後は定期的な歯科検診が義務化される可能性もあります。認知症や内臓疾患など、お口の中から後々大変な病気が起きる可能性もあるので、歯医者を受診してそれを防いでいくことが大事です。

 

 

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